参入する業界の収益性を考える
前回のブログはサービス提供時の代金回収リスクについてでした。
今回は事業を始める時の業界の収益性をどのように検討するかについてです。
独立して事業を始める、ということはサラリーマンをやめて自分の力で経済社会に挑戦することを意味します。
サラリーマン時代とは異なり自由を得られるかもしれないですが、すべてが自分次第になります。
有給休暇はないので休めば休むだけ労働時間が減り収入も減ります。
自分で動かないと仕事がなくお金が入ってこない状態です。
逆に言うと働けば働くほど収入が増えます。
事業を始める業界が自分の望み通りの収入を得ることができる業界かどうかの検討をすることも重要になってきます。
ポーターの5フォース分析
私は経済学部出身ですが、これまでの人生で経営学を学習する機会がありました。
経営学といっても様々な内容がありますが、今回はマイケル・E・ポーターの考える「ポジショニングアプローチ」に焦点を当てます。
ポーターは「儲かりそうな市場」を選択して、競争を回避するために「障壁」を築いて、「儲かる位置取り」をすることが必要であるとしています。
ポーターは儲かるかどうかを見定めるツールである「5フォース分析」を考え出しました。
5フォース分析は、5つの要素に分類して業界の収益性や自社の収益性を分析する手法です。
5つの競争要因は以下の内容になります。
・既存業者間の敵対関係
・新規参入企業の脅威
・代替品の脅威
・売り手の交渉力
・買い手の交渉力
「既存業者間の敵対関係」は、ある業界に既に参入している企業同士の競争関係です。企業の競争行動が激しいほど競争状態も熾烈になります。
「新規参入企業の脅威」は、ある業界に新しく参入しようとする企業が存在し、その業界への参入障壁が低い場合には競争状態も激しくなることです。
「代替品の脅威」は、ある製品(サービス)と同じ機能を持つ製品であり、保有することによって従来の製品が不必要になる製品です。
「売り手の交渉力」は、ある業界(の企業)に対し、製品を生産するための部品や原材料を提供する供給業者の持つ交渉力です。
「買い手の交渉力」は、ある業界(の企業)が製品を販売する顧客の交渉力です。
ポーターは脅威を明らかにして、それぞれを分析することで、業界の収益構造を明らかにするとともに、自社の競争優位性を探ることを分析の目的としました。
税理士業界の5フォース分析
税理士業界の5フォース分析はどうでしょうか。
既存業者間の敵対関係…既に参入している税理士同士の競争関係はある程度あるかもしれませんが、価格競争は激しくありません。税理士業務は労働集約型の業務であり、価格を下げると自分の首を絞めることになるからです。また、在庫が不要で固定コストがかからず撤退障壁が低い業界であると言えます。
新規参入企業の脅威…税理士業界には簡単に参入できません。なぜなら税理士資格が必要だからです。新しく参入するための障壁が高いので競争状態は他の業界よりも相対的に激しくありません。
代替品の脅威…税理士は顧客の会計入力や税務処理をすることがメインの仕事です。これらは会計や税務ソフトが進化すると取り替えられるかもしれません。AIの進化も噂されています。ただし、まだまだ取り替えられない状況にあります。
売り手の交渉力…税理士の交渉力です。税理士の数が少ないと税理士報酬が高くなります。税理士自体が多いか少ないかは難しいところですが、税理士の平均年齢は60代と高く、30代の税理士の数は相対的に少ないので、売り手の交渉力は低くないかもしれません。
買い手の交渉力…顧客の交渉力です。顧客の力が強いと税理士報酬が低くなります。買い手の数が少ないと買い手の力が強くなり税理士報酬が低くなりますが、税理士のお客様は企業から個人事業主、個人まで幅広いため、報酬金額も千差万別になっています。
以上が税理士業界における5フォース分析になります。
私は税理士業界に参入するにあたって5フォース分析をキッチリしていたわけではありませんが、頭の中でうっすらと考えていました。
税理士業界の収益構造は悪くはない、と考えています。
これから事業を始める時の業界の収益性分析として、ポーターの5フォース分析をしてみるといいかもしれません。
編集後記
メインの写真は、過去に行ったことがあるチェコのチェスキークルムロフです。
安全に海外旅行に行けるのはまだまだ先でしょうか。
本日からW杯ですね。日本では深夜や早朝に試合開始になることが多いので、
体調を崩さない程度にできる限り試合を見ることができればと思っています。